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不動産クラウドファンディングの「運用終了」「償還」の基準とは?
更新日 2025年4月11日

本日は、本件について法令等の根拠を踏まえた解説を弊社の顧問、山口仁史さんにお願いします。
- 利回り不動産における運用終了の基準
- 運用終了の基準の法的根拠
- (1)「国交省モデル約款」とは
- (2)運用終了はどのように規定されているか
- 満期運用終了について詳しく解説
- (1)満期運用終了の場合の資金化の論点
- (2)利回り不動産における満期運用終了の取扱
- (3)運用期間の延長
- 早期運用終了について詳しく解説
- 運用終了のお知らせ
- 運用終了と償還の違い
- 償還について詳しく解説
- 償還の法的期限
- 償還遅延の場合はどうなるか
- (1)償還遅延の事業者は電子取引禁止
- (2)契約成立前書面の規定
1.利回り不動産における運用終了の基準

山口:
利回り不動産での基準は次の通りです。
(1)満期運用終了
「満期日」が運用終了日となります。満期日を以て弊社の自己資産に組み入れる場合や、承継ファンドを組成する場合を含みます。
(2)早期運用終了
「弊社が対象不動産すべての売却代金の受領を完了した日」が運用終了日となります。
このように、利回り不動産では「対象不動産が存在しているうちは運用中、全部資金化されたら運用終了」としています。
2.運用終了の基準の法的根拠

山口:
ここからは、国土交通省が定める「不動産特定共同事業契約のモデル約款」(以下「国交省モデル約款」といいます)に基づいてご説明します。
(1)「国交省モデル約款」とは
「国交省モデル約款」は国土交通省のホームページに掲載されていますので、どなたでもご覧になれます。
不動産特定共同事業法第23条には「約款に基づいて契約を締結しなければならない」という趣旨の記載があるため、「国交省モデル約款」は国土交通省が原則を規定した契約書式として制定されたものと言えます。
不動産クラウドファンディング事業者は、どの事業者も「国交省モデル約款」をベースに約款を制定しています。各事業者でカスタマイズした約款になりますので、「国交省モデル約款」と100%一致しているとは限りません。
しかし、各事業者の約款は、事業の許可を受けた国土交通省または都道府県から承認を受けることが必須です。

山口:
そうですね。「国交省モデル約款」は投資家を保護するために必須なラインを確保したものと考えてよいでしょう。
(2)運用終了はどのように規定されているか
前置きが長くなりましたが、「国交省モデル約款」によって運用終了がどのように規定されているかをご説明します。
以下が「国交省モデル約款」(第1号事業匿名組合契約型約款)の該当箇所です。
①が満期運用終了、②が早期運用終了のケースと解されます。
「国交省モデル約款」P.7
第10条 本契約は、以下のいずれかの事由が生じた場合には終了する。かかる事由の発生により本契約が終了した場合、本事業者は、本出資者に直ちに通知するものとする。
①第9条に定める本契約の契約期間の満了
②対象不動産全部の売却等の完了
(以下略)

山口:
そうですね。ただし、「国土交通省モデル約款」は言葉で書かれている以上、その解釈が分かれる余地はゼロではありません。しかし、事業者の恣意的な解釈によって投資家に被害が生じることは避けねばならないと思います。
3.満期運用終了について詳しく解説

山口:
はい。満期により運用を終了するのは当然なのですが、次のような論点があります。
(1)満期運用終了の場合の資金化の論点
問題は、満期を迎えた場合に「どうやって資金化するか」です。特にインカム型の場合は、全期間フルに賃料を得るためには、満期日までは売却できません。
「国交省モデル約款」では、満期日の翌日以降に売却等により資金化することも想定されていると解釈できる部分があります。それは、以下の規定です。
「国交省モデル約款」P.8
第10条2 前項の規定によって本契約が終了した場合、本事業者は、本事業において金銭以外の資産があればこれを換価処分した上、(中略)、出資の価額の返還を行うものとする。
しかし、満期日の翌日以降を決済日(売却代金受領日)とする契約を買主との間で締結していたとしても、不動産取引の世界では、その後、買主の事情が変わった場合等に売却できなくなる可能性があります。
そうなった場合、事業者としてはファンドの運用期間を延長したいところですが、もう延長はできません。というのは、延長のためには「国交省モデル約款」にある通り、満期予定日のXヵ月前(利回り不動産の場合は1ヵ月前)までに出資者に通知しなければならないからです。
「国交省モデル約款」P.7
第9条 本契約の契約期間は、 XXXX年XX月XX日からXXXX 年XX月XX日までとする。
第9条2 前項にかかわらず、本契約の契約期間内に対象不動産全部の売却等が完了しない場合には、本事業者は、本契約の契約期間の満了日のXヶ月前までに本出資者に書面又は電磁的方法により通知をすることにより、X年を超えない範囲で本契約の契約期間を延長することができる。

それでも、出資者への事前通知を行ったうえで、運用期間の延長ができるんですね。利回り不動産では満期運用終了をどのように行っているのですか?
(2)利回り不動産における満期運用終了の取扱
山口:
今お話ししたような問題点があるため、利回り不動産では、満期運用終了のファンドを次の通り取り扱っています。
①インカム型ファンド
対象不動産を満期日の翌日に後継ファンドによって継承したり、外部売却や自己資産に組み入れたりして資金化することにより、満期日を以て運用終了できるようにしています。
②キャピタル型ファンド
満期日までに売却代金を受領できるよう運用しています。満期日当日に決済する場合を除き、早期運用終了になります。
満期日までに売却代金を受領することができない可能性が発生した場合は、あらかじめファンドの運用期間を延長します。
キャピタル型ファンドが満期日を迎えた場合、対象不動産の組替えも外部売却も行っていないにも関わらず、キャピタルゲインを分配し、価額以外同じ状態で後継ファンドに組み入れることは、基本的に想定していません。従前ファンドのキャピタルゲイン原資を後継ファンドの出資者が負担する、つまり、後継ファンドの出資者が対象不動産を高く買わされる形になってしまうからです。
もっとも、対象不動産のバリューアップや地価高騰により、客観的に見て価額が上昇したこと等を、後継ファンドの投資検討者に合理的に説明できるのであれば、その限りではないかもしれません。
(3)運用期間の延長

山口:
既に償還まで完了しましたが、過去にありました。
利回り不動産第41号・44号ファンド(中村橋プロジェクト)です。2024年5月31日を当初の運用終了日としていたキャピタル型ファンドでした。その延長の際には、契約書面に基づき、満期予定日の1ヵ月以上前である2024年4月23日に出資者の皆様にお知らせすると同時に、出資者以外の会員の皆様や会員以外の方々にもわかるようホームページでも公表しました。
どちらのファンドも、諸般の事情で対象不動産の一部の権利者様との協議が想定以上に長期化し、取得完了見込みが遅くなりました。満期予定日前までの取得完了目途は立っていたものの、残り期間では売却を堅実かつ安定的に完遂するには短く、売却活動に十分な時間を確保することが元本欠損のリスク低減と分配金の確保につながると判断したため、ファンド期間を1年間延長させていただきました。最終的には7か月程度の延長で、延長期間を含めた予定通りの分配と償還を行うことができました。
※延長時のお知らせ詳細はこちらをご確認ください
4.早期運用終了について詳しく解説

山口:
では、早期運用終了について解説しますね。これにも次のような論点があるのです。
(1)早期運用終了の定義
「国交省モデル約款」では、厳密には「”早期”運用終了」の定義は明記されていませんが、先ほどご説明の通り「対象不動産全部の売却完了」は運用終了の条件のひとつとして規定されていますので、早期運用終了はこのケースに該当すると考えられます。
(2)売却完了の定義
ここで問題となるのは、「何を以て売却完了と定義するか」です。
利回り不動産では、「(運用期間途中での)対象不動産すべての売却代金の受領」=「売却完了」=「(早期)運用終了」としています。対象不動産が存在しているうちは「運用中」、全部お金になってしまえば運用対象がないので「運用終了」、というシンプルな考え方です。
それに、満期運用終了のところでもお話ししたように、不動産取引の世界では、売却代金を受領する前に買主の事情が変わった場合は、売却自体が流れてしまう可能性もあります。そのため、それまでは「運用終了」とは言えないのです。
なお、「全部売却」が運用終了の条件ですから、複数の物件で構成されるバルク型ファンドにおいては、一部の物件を売却しただけでは運用終了とはなりません。
5.運用終了のお知らせ

山口:
利回り不動産での流れをご説明します。まず、利回り不動産では、対象ファンドへの出資者の皆様に対し、原則として運用終了日の翌営業日に「満期運用終了のお知らせ」「早期運用終了のお知らせ」をマイページにてお届けしています。後者については、E-mailにてもお知らせしています。
但し、お知らせまで運用終了日から2〜3営業日程度のお時間をいただく場合があります。お知らせには実績利回りを記載するようにしているため計算が必要で、ファンドの決算概要が固まらない場合(大きな金額の請求書が未着等)があるからです。
6.運用終了と償還の違い

山口:
「償還」は文字通りお金を返すことを指しますので、利回り不動産では「運用終了」と「償還」は別に定義しています。「運用終了」からファンド決算期間を経て「償還」となります。
7.償還について詳しく解説
山口:
利回り不動産では、ファンドの決算のために一定の日数をいただいています。現在の業務フローでは、基本的に運用終了日の10日後までの償還(出金依頼受付開始)を予定していますが、決算業務の分量・決算業務期間中の祝日の日数・ファンド特有の事情等によっては、より日数をいただく場合があります。
先日償還した「第62号ファンド(福井県レジデンスバルクPJ)」は、あらかじめ出資者の皆様にはお知らせしたのですが、除雪費用の請求書の到着の関係で決算に時間を要し、償還までやや長い日数がかかりました。このように、対象不動産の所在地の気象条件や協力業者様の都合によって変わることもあるのです。
このようなケースも含め、利回り不動産では運用終了日の概ね20日後頃までを目途に償還できるよう努めています。
償還金の出金依頼受付開始日には、対象ファンドの出資者の皆様宛E-mailにて「償還のお知らせ」をお送りしています。
8.償還の法的期限

山口:
償還期日は「国交省モデル約款」に規定されています。
運用終了後、法的にはいつまでに償還しなければならないかについてご説明します。
「国交省モデル約款」では、「各計算期間末の属する月の2ヶ月後応当月の最終営業日まで」と記載されていますので、運用終了日から「最長で3ヵ月”弱”」以内に償還しなければならないと解されます。
たとえば、満期日が4月1日だとすると、その2か月後の応当月は6月であり、その月末日である6月30日が最も遅い場合の償還期日と言えます。
「国交省モデル約款」P.7
第8条5 本事業者は、各計算期間末の属する月の2ヶ月後応当月の最終営業日までの間で、本事業者が裁量により指定する日(以下「金銭配当日」という。)に、前項第(2)号④及び⑤に基づき各優先出資者及び本事業者に分配された当該計算期間に係る匿名組合利益(もしあれば。但し、前項第(2)号①ないし③に基づき匿名組合損失の補てんに充当された匿名組合利益は含まれない。)相当額の金銭を各優先出資者に支払い又は本事業者が収受するものとする。
9.償還遅延の場合はどうなるか

山口:
その事業者は、電子取引で新規ファンドを募集することができなくなると思います。
(1)償還遅延の事業者は電子取引禁止
まず、事業者が契約上の償還期日までに償還金を支払わない場合は、「償還遅延」「延滞」と言えます。
「国交省モデル約款」上は、「運用期間(契約期間)の延長」はありますが、「償還延期」はありません。
国土交通省が制定した「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」(以下「国交省ガイドライン」といいます)という行政指導指針においても、「償還延期」の表記はありません。「償還遅延」とされています。
そこでは、事業者の責任によって償還遅延の投資家被害が生じている場合は「電子取引業務を行わないものとする」と規定されているので、新規ファンドの募集ができなくなるわけです。
「国交省モデル約款」P.15
7.-(4)-④ その他電子取引業務の対象とすることの適否の判断に資する事項
イ. 対応が求められる事項
次の事項について適切な審査を行う必要がある。
a. (略)
b. 過去に不動産特定共同事業等を行っている場合において、不動産特定共同事業者等の責に帰すべき事由等により元本の償還遅延等の投資家被害が生じていないか。
(注)投資家被害が生じている場合には、電子取引業務を行わないものとする。
(2)契約成立前書面の規定
今お話しした事項は、「不動産特定共同事業法施行規則」第43条第1項第43号により同第54条第2号を参照する形で、契約成立前書面への記載が義務付けられています。
利回り不動産では、同書面の項番25.-Dにそれを記載しています。
不動産特定共同事業法施行規則
第43条(不動産特定共同事業契約の成立前の説明事項) 第1第43号
第54条第2号に規定する措置の概要及び当該不動産特定共同事業契約に関する当該措置の実施結果の概要
第54条(電子取引業務に係る業務管理体制) 第2号
電子取引業務に係る不動産特定共同事業契約に関し、その不動産特定共同事業契約に係る不動産特定共同事業者等(不動産特定共同事業者及び当該不動産特定共同事業者に不動産取引に係る業務を委託する特例事業者をいう。第四号において同じ。)の財務状況、事業計画の内容及び資金使途その他電子取引業務の対象とすることの適否の判断に資する事項の適切な審査を行うための措置がとられていること。

プロフィール
山口仁史
株式会社ワイズホールディングス顧問、利回り不動産のオペレーション・CS担当。
早稲田大学政治経済学部卒業、現三菱UFJ銀行に入行。
支店勤務を経て、本部にて有価証券に係る法令・決済・IT・会計等の管理系業務に従事。金融商品取引法導入、有価証券電子化・決済制度変更・カストディ、金融商品会計・IFRS、J-SOX、銀行合併に伴うシステム統合、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の前身会社の設立等を担当。
銀行勤務時代に一棟マンション投資を始め、複数棟を取得。のち独立・起業し、現在は不動産投資家・経営者、業務改善コンサルタント。
もっと手軽に、もっと身近に!1万円から始められる次世代の不動産クラウドファンディング「利回り不動産」
多額の資金が必要となる不動産物件を小口化させて、短期間で投資ができる不動産クラウドファンディング。
「将来のために資産形成をしたい」「少額で不動産投資を始めたい」「中長期的な資産形成に挑戦したい」
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RIMAWARIBLOG運営元情報

- RIMAWARIBLOG編集責任者
- 「利回り不動産」が提供する「RIMAWARIBLOG」ではサービス利用者へ向けた企画情報の発信に加え、各分野の専門家の監修・協力を得て、不動産投資や資産形成をはじめたいと考えている読者に向けて、親切で役に立つ情報を発信しています。
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