利回り通信vol.3 町屋再生にまつわる12の質問【台湾を代表する建築家:李靜敏】に聞きました。 | 利回り不動産《RIMAWARIBLOG》

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利回り通信vol.3 町屋再生にまつわる12の質問【台湾を代表する建築家:李靜敏】に聞きました。

2023/12/26

更新日 2023年12月28日

とうしろう
RIMAWARIBLOGをご覧の皆様こんにちは!このブログでは利回り不動産と台湾の襲園グループとの新しい取り組み「京都町屋再生プロジェクト」についてご紹介します!1月月初旬からスタートする本企画は台湾を代表する建築家とのコラボレーション企画です。台湾の建築家がなぜ京都の町屋を手掛けるのか李静敏(リー・ジンミン)の京都町屋再生についてお話を伺いました。の想いを伺いました。

 

台湾を代表する建築家、李静敏が率いる「襲園(しゅうえん)グループ」は、禅の世界観を核とし、建築デザインを主軸に、アート、食、宿、旅を通じて芸術のように生きる「生活美学」という独自のライフスタイルを提唱する、総合ライフスタイルブランドを提供しています。

2023年で設立20周年という記念すべき年に、新たな取り組みとして日本・京都でのプロジェクトをスタートしました。
利回り不動產と共に、京都の歴史的な町屋を再生し次世代へ受け継ぐことをテーマに掲げる本プロジェクトは、京都の町屋をを保護・活性化し、豊かな文化と伝統を未来へと継承することを目的としています。

⬇︎京都再生プロジェクトの詳細ははこちらから⬇︎
利回り不動産、襲園美術館,陳善豪,李靜敏

近年、李静敏は頻繁に京都を訪れています。伝統的で趣のある街なみに感銘を受けながら、現状を観察し、未来のビジョンについて語りました。

質問1:京都の文化に興味を持った理由は何ですか?

李静敏

「京都の伝統的で、地元に根差した文化」が好きです。
私は子供の頃から「中国伝統の美学」に興味を持っていました、その中でも唐や宋時代の美学に興味があった私はその時代の詩や文化について学んだことがります。その学びのなか、歴史の過程で失われた伝統的な唐や宋時代の文化がいまでも京都には息づいていることを知りました。
初めて京都に来た時に、これまで学んできた詩や文化が映し出す風景がそのまま京都には存在し、感銘を受けたことを覚えています。

質問2:日本の伝統建築に対する見解は何ですか?

李静敏:

どんな伝統的な建築にも言えることですが、特に京都の建築は、古代中国の唐・宋時代の都市建設に深く関連しています。
京都の伝統建築は土地との結びつきがあり、使用されるどのような素材も、四季の美しさや季節の変化を感じさせますし、節気や食文化とも大きく関係しています。

もっと具体的に言うと、京都の伝統建築は中国語で言うところの「接地」していると思います。接地とは土地に関連した言葉で、ただ単に建てられた建物ではなく、元々の土壌や血脈がその中にあり、その土地と一体化していると感じています。

質問3:伝統的な要素と現代の建築をどのように考えていますか?


李静敏

多くの人は伝統の定義を誤解していると思います。伝統とは「保守的なもの」、「古いもの」だと考えられがちですが、私はそうとは思いません。文化を語る上での「伝統」とは、常に革新的であり、継承されるものだと考えています。
現代の人々にとって、伝統が現代の美学やライフスタイルと結びつけば、その意味はより良く広がります。それは現代人により適合し、国際的な視点、さらには宇宙的な観念にさえ合致していくものだと考えています。

質問4:「環境保護」を町屋の改修や建設にどのように取り入れていますか?


李静敏:

伝統的な建築、特に町屋の修復や再生の分野においていうと、できるだけ元の素材を使用するべきだと考えています。
それをすると多くの場合に新築よりコストがかかりますが町屋づくりにおいて考慮すべき大切なパートだと思います。

そして私たちが普段、食べる物や着る衣服と同じように、本質を大事にし、行きすぎた装飾や添加を避けシンプルにすることが大切だと思っています。
元々ある町屋の持ち味を保持すること、さらに元の素材を再利用し、再活性させることで、過去から現在に至る「連続性を感じさせる」ことが町屋作りにおいて重要だと思います。

これは環境保護、資材の再利用、持続可能な開発にもつながり、まるで建物が私たちと一緒に呼吸しているかのような感覚を与えることにつながります。

質問5:京都の町家の再生を通じて、学んだことはありますか?

李静敏:

そうですね、尊敬と思いやりでしょうか。もっと具体的に言いうと、台湾や日本にとどまらず世界的にみても現代人は尊敬と思いやりを失いつつあると感じています。
現代では自由を重視しますが、真の自由と自己は「他人」がいてこそ。そして「世界」、「物」、「環境」との関係によって成り立ちます。
人は一人では生きられず、「人と関わることで」、持続可能な発展が初めて可能となると考えています。

京都の街には、その失われつつある尊敬や思いやりの精神がまだ息づいています。そこから学んだことは少なくありません。

質問6:伝統建築と現代建築のバランスを取る際に直面する困難は何ですか?

李静敏:
そうですね。それは「時空背景」でしょうか。古い伝統建築は、その時代の背景に合わせて、家族倫理、社会倫理、階級倫理を重視した、それぞれの属性を持って作られています。

一方で現代建築は開放的で、自由な解釈が可能です。それらの歴史的物語を残しながら新たな解釈をや意味を与える作業が一番難しいと感じました。
しかしながら、それらが「ぴたっと」一致した瞬間には素晴らしい達成感があります。

質問7:町屋の改修や建築中に、予期せぬ発見や面白い逸話はありましたか?


李静敏:

町屋づくりには多くの材料が惜しまれ、それらが尊重されていることを京都で学びました。
貴重な材料は大事にされ、重要な梁柱は他の家から譲り受けたもの、建物よりもさらに古い時代から存在するものを活用し、中には何百年にも渡り代々受け継がれた材料だったりします。
さらにそれらには完成年が記録されているものもあり、譲り受けた際にそれまでの歴史の中で、その材料がどのように活用され「どのように生きて現在に至るのか」そういったストーリーを聞く機会がよくあります。その長い歴史の中で受け継がれてきた面白い物語がたくさんありました。

質問8:日本の建築家や現地の関連業者、職人との協力において、どのような発見がありましたか?


李静敏:

京都の建築家や職人たちの文化的素養は非常に高いです。私たちが協力する現場の施工スタッフの多くも、
建築家や技師としての様々な資格を持っています。

「コミュニケーションの過程は学び合う過程です。」現場で私が観察したのは、
町屋の中には未知の要素が多く、事前の評価では見つけられない問題も、解体や分解の過程で初めて発見されることがあります。
私たちは一緒に討論し、これらの技術者や職人が私たちに教えてくれ、その後の教育に生かし経験として共有し継承しています。
これは他の場所ではなかなか経験できないことで、彼らは仕事を単なるルーティンとしてではなく、面白いことを発見し、討論する素晴らしい過程だと考えています。それらに感銘を受けました。

質問9:京都の町屋の再生において、台湾や他の地域でよく使われる特有の技術や要素を取り入れていますか?


李静敏:

町屋にはもともと「特定のレイアウト」と枠組みがあります。上記写真のすでに再生を完了したギャラリーやイベントスペースとして活用中の「京寬堂(きょうかんどう)」に関して言うならば、私たちは伝統的に保存すべき文化を残した上でその枠組みを打ち破ることを試みました。古いものを単に修復するのではなく、新たな生命を建物に吹き込み現代のライフスタイルに合わせてアップデートを目指しました。
中でも私の好きな要素の一つが「太陽光」

「光」、「空気」、「水」などの要素は、現代人にとって最も癒しを必要とするものですが、これらの要素を上手に取り入れることで、建物は全く異なるものに変わります。中国文化では、これを「借景」と呼びます。
天空や自然の景色を借りることを意味します。雨が降っているのか、太陽が出ているのか、朝日が東から斜めに差し込んでいる時や雪が降っている時など、
自然が私たちに与えてくれる最も貴重な視野や感覚を感じ取ることができます。これらの要素を建築に取り入れることは素晴らしいことで、私は今後もそれは続けて行いたいと思っています。またこれは、中国の伝統的な「庭園林建築」からインスピレーションを得た考え方です。

質問10:京都第一号館の「京寬堂」の製作過程で、最も誇りに思う感覚は何ですか?


李静敏:
京都第一号館の「京寬堂」に関しまして、特に誇りを持っている部分についてお話しすると、その建物と最初に出会った際、それはまさに崩れかけの状態でした。そのような状況の中で、私にはその建物に新しい価値を見出し、新たな命を吹き込むことができたのです。これまで長い間、人々の目には価値が見出せないとされていたその建物を、自身の手で全く新しい姿へと変貌させることができたのです。そして、改修後の建物をご覧になった地域の方々が、「昔はこんな風だったのに、今はどうしてこんなに美しく変わったのですか?」と驚かれた時、私は大変な感動と喜びを感じました。それは私にとって非常に価値のある経験であり、最も誇りに思う瞬間でした。

質問11:この建築の誕生によって、地元コミュニティとどのような交流がありましたか?


李静敏:

地元コミュニティとの関わりについてお話ししますと、私はまだ日本語が完全には得意ではありませんが、地域の生活様式や価値観に深く共感し、溶け込むことを目指しています。溶け込むとは、単に何かを加えたり、加わることだけではなく、文化や習慣に対する理解と尊重を深めることを意味します。たとえば、私は帰宅するときには玄関に花を挿し、環境を整えます、朝日が昇る前に建物周辺をきれいに掃除するようにしています。これらの行動は、私が京都の文化と一体化していく過程だと思っています。自分自身を京都のコミュニティの一員と見なし、そうあるべく努力しています。

質問12:将来、日本の他地域で伝統建築の修復作業に参加する予定はありますか?


李静敏:
非常に興味を持っていますし、期待しています。日本には多様な地域文化があり、その中でも特に「里山」に興味を持っています。里山は自然の風水や地形によって形成された、山に囲まれた美しい場所ですよね。そこには川が流れ、独自の地域文化を持った村が形成されています。これらの地域の古い家々を改造することは、非常に魅力的な体験ですし、それらを活用していくことは素晴らしいことだと思います。私たちの仕事は、古い家を改造するだけでなく、地域の人々と共に一つの共有された夢を形成することにも関わっていると言えます。それぞれの地域が持つユニークな文化に触れ、それを大切にすることは、私にとって非常に意義深いことでありチャレンジをしていきたいことの一つです。


襲園グループ紹介

襲園グループ
襲園グループは今年で創立20年を迎えた台湾を代表する建築家の1人、李靜敏(リー・ジンミン)率いるクリエイター集団。「僕人建築空間整合」、「襲園美術館」などを台湾や中国に展開しています。禅にインスパイアされた建築・空間デザインを柱とし、アート、食、住、旅を通して本質的で上質なライフスタイル「生活美學」を提案する総合ライフスタイルカンパニーです。

襲園グループ理念

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ZENGO CHEN
ZENGO CHENRIMAWARIBLOG編集責任者
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