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マイホームを買う前に。~それって望んだ人生ですか?~
更新日 2026年1月9日
さて、本日は「マイホーム購入」をテーマに、物件選びとは異なる観点から、元銀行員で不動産経営者の当社顧問山口仁史氏による寄稿をお届けします。なお、本稿は個人の見解であり、特定の事業や資産を推奨するものではありません。
1.はじめに
いま、不動産価額の高騰や金利上昇を背景に、マイホーム購入を検討している方も多いことでしょう。
私は、経歴のせいかマイホーム購入に関するご相談をお受けすることがあります。お話を伺うと「マンション価額が値上がりし金利も上がり始めているので、(独身だが)早く買いたい」「東京都〇〇区にマンションを買いたいが、高すぎる」など、みなさま非常に真剣に悩まれています。
そうしたご相談を通じて感じるのは、マイホーム購入がいつの間にか「物件価額」や「ローン条件」だけの話になってしまっているケースが多い、ということです。もちろん、数字の検討は重要ですが、それだけで物件選びに走ってしまうことは少しもったいない、と私は感じています。
就職活動の際、「自分が何をしたいかを深く考えないまま会社選びに走ってしまうことは、おすすめできない」のに似ている、と言ったらおわかりいただけるでしょうか。
マイホームは、単なる不動産ではなく、その後の「人生」を長く過ごしていく「拠点」となるものです。だからこそ本稿では、物件選びの前に「どのような人生を送りたいのか」という観点から、マイホーム購入について整理していきたいと思います。
2.人生の選択肢
マイホームを購入する方は、ほとんどが住宅ローンを借りることになると思います。そうすると、返済のために長期にわたり安定した収入を得て行くことが必須になります。そのため、少なくとも住宅ローンを完済するまではサラリーマンを続けるつもりの方も多いことでしょう。
そこで考えていただきたいのは、それが「本当に自分が望んだ人生なのか」ということなのです。
マイホーム購入を検討している方は、ある程度の自己資金を貯めていることでしょう。ここでは、自己資金の活用という観点から、いますぐマイホームを購入する以外の「人生の選択肢」を考えてみたいと思います。
①起業する
最近は学生のうちに起業する方も増えていると聞きますので、この選択肢は若い方ほど抵抗なく受け入れていただけるかもしれません。
以前から起業を考えていた方は、自己資金を元手に実行に移すことも選択肢のひとつです。副業OKの会社にお勤めの方は、サラリーマンを続けながら小規模な副業で試してみるのもありだと思います。
ある方は、サラリーマンを続けながら、副業として、ビルの一室を借りて時間貸しのパーソナルジムを経営されています。ご自身ではトレーナーはやらず、利用者とトレーナーのマッチング・予約のシステムを開発されたそうです。
一方、これまで準備もして来なかった事業をいきなり始めたり、「今の会社が嫌だから」という理由で起業を“口実”に会社を辞めてしまったりするのはNGです。事業には大きな責任を伴いますので、自分のスキルを活用しながら、得意分野で前向きに挑戦できる事業に絞るべきだと思います。
事業が成功すれば、「人のために役立っている」という充実感を得て、会社内とはまた違った自分の存在意義を再認識することができるかもしれませんし、起業のために一旦は減らした自己資金を復元し、さらに増やせるかもしれません。
そして、事業の内容・規模・将来の展望によって、その資金を事業拡大に使うのもよいし、あるいはマイホームを買うのなら、たとえば自宅で営業できるようにするなど、場所・物件タイプ・広さなどに事業との関連要素を加味することもできます。
中には事業で大成功を収め、株式公開等によって富を手にする人がいるのはご存じの通りです。そうなれば、マイホーム購入の自由度も各段に上がることでしょう。
②投資用不動産を購入する
自己資金+投資用不動産ローンで投資用不動産を購入し、家賃収入を得ると同時にインフレ対策にする、というものです。
これは、マイホームより先に投資用不動産を買う方法です。たとえば転勤が多くてずっと同じ家に住み続ける可能性が低い方で、不動産経営をしたい方などは、検討してみてもよいでしょう。
サラリーマンの方の多くは、ご自身で物件を管理する時間がないと思われますので、管理を業者に委託すれば、いわゆる「サラリーマン大家」になることが可能です。
ただ、不動産投資には物件の選球眼が必要になりますし、不動産経営はお小遣い稼ぎではなく、入居者の生活に直結する大きな責任を伴う事業です。また、投資用不動産ローンは住宅ローンよりも金利が高いことから「借り過ぎ」はNGですし、修繕費等を中心に高コストな事業であることなどから、必ず採算が合うようにしなければなりません。不動産投資は、資金的な余裕が十分ある方が選択肢として検討すべきでしょう。
また、立地のよい不動産は価額が高いため、インカム利回りはあまり期待できないのが一般的です。コストを差し引いた後の利回りを比較すると、金融商品のほうがよいと思えるケースが大半かもしれません。かと言って、インカム利回りが高くても立地の悪い物件は、空室リスクが高くなる可能性があり、基本的にNGだと思います。マイホームなら立地が悪くても自分や家族が納得すれば住めますが、賃貸物件は入居者次第だからです。
投資用不動産の購入を検討する際は、立地を重視し、ローンを返済しても相応のキャッシュが手許に残り、継続的に利益を得られ、出口戦略を立てられるような物件を見つけられるかがポイントです。
③金融商品で運用し“自分向け家賃補助”を作る
マイホームは高くて買えないし、かと言って、いま住んでいる賃貸の家賃も高いし、という方もいらっしゃることでしょう。そういう方は、当面は賃貸に住みながら、自己資金を債券・株式・投資信託等の金融商品を中心に運用し、利金・配当・分配金等を家賃の一部に充当することにより高い家賃を“緩和”することも可能です。
これはキャッシュフロー重視の考え方ですが、保有している株式等が値上がりすればインフレ対策にもなりますし、将来マイホームを買うための自己資金の一部に充当することができるかもしれません。当然、金融商品にはリスクがありますので、十分注意しながら堅実に、ということになります。
3.筆者の場合はどうしたか
これは1990年代から2010年代までの話なので、その前提でご理解ください。
筆者の場合は、賃貸住みのサラリーマンとして、先ほどの2-③のように金融商品で運用しながら20年かけて自己資金を増やし、2-②の不動産投資(一棟マンション)を開始し、のち2-①のように独立しました。2010年代はいまより物件価額が安く低金利だったので可能な手法でした。
詳しい話はとても長くなってしまうので、本稿ではこれくらいにしておきます。
4.いま不動産を買うとすれば
個人的には、住むなら都心に、投資なら都心ならずとも首都圏の立地のよい不動産を、と思っているのですが、目下、都心の立地のよい不動産はどんどん値上がりしており、ローン金利も2024年から上がり始めています。そのため「都心のマイホームも首都圏の立地のよい投資用不動産も買えない」というのが正直なところです。
10年以上前であれば、相対的に不動産価額は安く金利も低かったので、さきほどの2-②のような投資用不動産の購入はなかなかよい選択肢だったと思いますが、いまは難しいと思います。
仮にいま私が若くて「マイホームか投資用不動産か、どちらか買うほうを選べ」と強制されたなら、金利と税制優遇の面でマイホームを選ぶでしょう。ただ、起業・独立の夢を捨てるわけではなく、いずれは実現できるよう準備に取り組むと思います。
5.ベストタイミングは人によって違う
これまで「起業」だの「不動産投資」だのと書いて来たのですが、決してマイホーム購入を否定しているわけではありません。
買いたい家が見つかって、買うことが最優先なら我慢する必要はありませんし、いまは買えなくても、人生のどこかの時点で買ったほうがよい、と私は思います。
ただ、いまがマイホームを買うベストタイミングなのか、その場所・物件種類・広さ等が人生の拠点として最適なのか、というのは、「その人が描く人生によって異なる」と思うのです。
また、私はサラリーマンを長く続けましたので、サラリーマンを否定しているわけでもありません。サラリーマンの信用力で住宅ローンを組めるのはとても魅力的です。但し、サラリーマンは、いずれは定年退職します。その後、“余生”を送るのでよいのか。それがその人が「本当に望んだ人生」なら、それでよいのです。
不動産価額や金利も重要ですが、具体的な物件選びに入る前に、自分が人生で何を成し遂げたいのか、選択肢や優先順位を考えた上でマイホーム購入を決断したほうがよい、ということなのです。
もちろん、人生この先、何があるかわかりません。ただ、それらを考えた上での決断であったほうが、将来、変化が起きた時、どこをどう軌道修正すればよいのかがわかりやすいのではないでしょうか。
挑戦すれば失敗もあります。しかし、一歩を踏み出さない限り、成功もないのです。自分では何も挑戦せずに「挑戦している人たちの人生の評論家」で終わってしまってよいのでしょうか。年を取ってから「住宅ローンを抱えていたから独立できなかった」などと言い訳しないような人生を歩みたいものです。
プロフィール
山口仁史
株式会社ワイズホールディングス顧問、利回り不動産のオペレーション・CS担当。
早稲田大学政治経済学部卒業、現三菱UFJ銀行に入行。
支店勤務を経て、本部にて有価証券に係る法令・決済・IT・会計等の管理系業務に従事。金融商品取引法導入、有価証券電子化・決済制度変更・カストディ、金融商品会計・IFRS、J-SOX、銀行合併に伴うシステム統合、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の前身会社の設立等を担当。
銀行勤務時代に一棟マンション投資を始め、複数棟を取得。のち独立・起業し、現在は不動産投資家・経営者、業務改善コンサルタント。
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